佐々木:僕も「少年ジャンプ」を読んで育っているので、同じ気持ちの人が描いているというか、自分と似た人が描いてる気がして、最初からシンパシーを感じました。なので、曲を書くにあたっても、無理に『マグメル』の世界観に寄せて曲を書かなくても、自然に今自分が書きたいものを書けば、『マグメル』の世界観に近いものが書けると思ったんです。

第:“The Key”というタイトルや、〈hello new world〉という歌詞にもマグメル感があって、すごく嬉しかったです。僕もジャンプ系の少年漫画をずっと読んできたので、仲間同士なんだなって。

佐々木:僕は1986年生まれで、『ドラゴンボール』、『幽☆遊☆白書』、『スラムダンク』とかを少年時代に読んでました。

第:僕もほぼ一緒です。ただ、冨樫先生の作品で一番好きなのは『HUNTER×HUNTER』ですね。

佐々木:『HUNTER×HUNTER』も大好きです。あと今回CDのジャケット用に描いていただいたイラストも最高でした。漫画のファンの人は絶対喜んでくれると思うし、あえてラフ画を使わせていただいて、ひとつのアート、芸術作品としてもかっこいいものになったと思います。

佐々木:『少し前にメンバーが変わって、新しいことにどんどんトライするような時期だったので、僕自身がシンプルに〈hello new world〉という気持ちだったんです。「マグメル」のことっぽく読めると思うんですけど、最初にも言ったように無理に寄せたわけではなく、自分の気持ちと「マグメル」の世界観が上手くリンクしたのかなって。

第:僕も常に新しい環境に身を置いているような感じがあるので、漫画家とバンドは似ているところがあるんでしょうね。

第:今はずっと漫画を描いているので、正直最近のものはあんまり聴いてないです。ただ、子供の頃に観ていた日本の古いアニメの主題歌とかは、今でも印象に残ってますね。なので、誰か特定のアーティストを聴くというよりは、「このアニメの主題歌」みたいな聴き方なんですけど、でも今回は縁を感じているので、a flood of circleの音楽はこれからも聴き続けたいと思います。

佐々木:『マグメル』にシンパシーを感じるのはまさにその部分で、僕はバンドをやるにあたって、アメリカやイギリスの文化に影響を受けつつ、それをどう自分なりに消化して、表現するかを考えるんですけど、第先生もきっとそうなんじゃないかと思っていて。自分の国の文化と、「少年ジャンプ」とか、外からの影響を上手く混ぜて作品を作ってるのは、尊敬もしますし、僕もそうありたいと思います。

第:『マグメル』の前は中国古来の作品を描いていたので、特に何かを考えることはなかったんです。ただ『マグメル』を描くにあたっては、少年漫画らしさ、ジャンプらしさとは何なのかを理解して、それを中国人としてどう表現するかを考えています。融合というよりは、自分が中国人であるということをベースにして、その上で何かを足していくような感じですね。

第:ひとつの言葉で表現するとしたら、「思い出」です。子供の頃からずっとジャンプの作品を読んできて、当時すごく感動した作品を今読み返すと、懐かしくなって、昔の自分を思い出す。そういう「懐かしさ」はすごく大事にしています。

佐々木:昔の「少年ジャンプ」に『封神演義』という漫画があって、あの作品は日本の作家が昔の中国のストーリーをベースに描いていて、中国に対する憧れや興味がすごく表現されていたと思うんです。言ってみれば、『マグメル』はその逆だから、すごく面白いブレンドだなと思って、僕はノスタルジーだけじゃなく、フレッシュさも感じました。「新しさ」を意識する部分もありますか?

第:僕はまずは「自分らしさ」を認識することが大事だと思っています。自分はどんな人間で、どんな環境で育ち、何が得意なのか。そういうことを認識して、「自分らしさ」を理解すれば、何を描くべきかも自然と見えてくる。そうやって描いた作品は、どんな作品であっても、自分らしい作品、自分らしい少年漫画になると思うんです。

佐々木:僕は新しいもの好きの性格なので、作品がフレッシュであることはすごく大事だと思っていて、だから最新のものを取り入れることを考えるんです。でも、第先生は自分とストイックに向き合って、その作品を読んだ僕たちがそれをフレッシュに感じるっていうのは……羨ましいです(笑)

第:僕からすると、佐々木さんのように常にフレッシュなものを追い求める勇気はすごく羨ましいです。僕はやりたいと思ったことをすぐにやれる環境ではないので。

佐々木:そっか、お互いないものねだりなんですね

第:僕は一時期日本に住んでいたこともあるんですけど、文化の壁は予想以上に厚いと感じました。『マグメル』のストーリーの中でも、いろんな種族が出てきて、見た目はみんな人間らしい形なんだけど、どうしても理解し合えない。それは日本で連載を始めて、すごく感じたことです。『マグメル』の舞台は架空の世界で、ストーリーも王道なので、まだ分かりあうこともできてると思うんですけど、これがより中国らしい作品だったら、もっと理解しづらくなるんだろうなって思ったり。

佐々木:より中国的な漫画も読んでみたいですけどね。

第:『マグメル』をやりながら、新しい連載も企画していて、それは中国文化が入った作品になると思うので、機会があればぜひ読んでもらいたいです。

佐々木:アメリカはシカゴとメンフィス、イギリスはロンドンに行ったんですけど、日本人だからか、アジア人だからか、最初はどこに行っても文化的な壁をすごく感じました。アメリカやイギリスのチャートにはアジア人の音楽がまだそんなには入ってないから、僕が何を考えているか、向こうもたぶんわからない。なので、最初はスタジオに行っても、会話が上手くいかないことが多かったです。でも、音楽すごいなって思ったのは、一緒に音を出して、セッションをすると、どんな音楽を聴いてきたかとかが一気に伝わるんですよね。『マグメル』を読んで、ジャンプらしさを感じたのにも近いと思うんですけど、そういうことがあると、一気に仲良くなれるし、一緒に仕事ができるムードになる。言葉だけで会話するんじゃなくて、作品で会話をするのが大事だなって思いました。

第:音を出せば理解し合えるっていうのはすごくいいですよね。漫画もそうなればいいなって思いながら、今も試行錯誤してるところです。

佐々木:アメリカもイギリスも『ドラゴンボール』のファンばっかりですし、『マグメル』のパワーはきっとどこの国の人でも感動できるものなんじゃないかと思います。

第:ありがとうございます。『マグメル』は架空の世界が舞台ですけど、いずれより中国らしい作品を描いて、その作品を通じて世界中のみなさんに中国の文化や自分の考える中国らしさを理解してもらいたいと思っているので、それを目指して頑張ります。例えばですけど、普通の日本人からするとあまり馴染みがないような、中国古来の武術を題材にしたバトル漫画を描いたとして、そのアニメのエンディングテーマを書いていただけるとしたら、どんなイメージで書きますか?

佐々木:超やりたい(笑)。僕は常に新しいことや知らないことに興味があって、少年時代に少年漫画が好きになったのも、それが大きいと思うんです。好奇心とか、知らないものを知りたいと思うパワーって、すごく大事だなって。なので、僕が知らない中国の武術のシーンとかってめちゃめちゃ見てみたいし、それに感動して生まれた自分の新しい曲を自分が聴いてみたい。機会があれば、期待に応えられる曲を書きたいです。