師弟対談 第1回はこちら
近藤先生が師匠より受けた影響や、両先生の交流について探る!!

デジタル移行でカラーにも変化が…!?

――お二人は現在フルデジタルで作画されていますが、デジタルになって良かったことは何ですか?

星野 仕事中にトーンの在庫が切れないことです。廃盤も含めて(笑)。あとは在宅システムで、アシスタントさんも自由な働き方ができるようになったこととか。あとは…ネームを描いてそのまま清書ができるのもいいですね。デジタルの恩恵は作業の簡略化が多いですね。でも表現するということにおいては、アナログもデジタルも変わらないと思っています。

近藤 私は2013年頃、デビュー後にフルデジタルに移行しました。ネームをデジタルでやるかどうかは悩みましたね。小さい画面の機種を使っていたので、拡大率によって見え方や描き込み具合が違って。描いて慣れないとしっくりこなく、自分の中に落とし込むことに苦労しました。

――デジタルで困ったことはありますか?

星野 雷が鳴るとマジでビビります(笑)。地震と雷の時はすぐ保存!バックアップ!でもなぜかソフトがバグって、数時間かけて塗ったカラーが全部飛んでしまったこともあったりとか…。

近藤 雷で逆流電流が来ると何をやっても無駄なので、諦めに近い境地になります。あとは漫画用のソフトは重い、とか。それ以外はデジタルで不満はないですね。

――星野先生はデジタルで塗りも変わりましたよね。

星野 アナログ時代はコピックでしたが、デジタルの塗りは本当に助かります。アナログの頃は毎回10枚以上は失敗していましたが、デジタルだと何パターンか塗って、そこで良いものを選べるようになりました。私は塗りにこだわりがないというか超苦手意識があったので、失敗するたびに心が折れて…その点失敗することがないデジタルは性に合っていると思います。あとはやっぱり「コピックの何番がない!」とか、画材が切れなくていいですよね(笑)。

――色の使い方やセンスが変わったところはありますか?

星野 デジタルに移行したばかりの頃は「この塗り方で固定しなくては!」と思ってやっていたのですが、デジタルって色んな塗り方できるじゃないですか。だんだんと、色々試してみたくなっちゃったんですよね。塗り方を固定する必要ってあるのかな?と。例えばファンブックでは敢えて柔らかい塗りにしてみるとか、その時の絵のイメージや伝えたい表現によって塗りの雰囲気を変えるようになりました。ミュシャ展に行って感動して「ああいった塗りをやってみたい」と思ったら、実際にセンターカラーでやってみたり。以前は「自分の塗りを決めねば」と、どこか苦行みたいになっていました。自分らしい塗り方を持つことに強い憧れがあったんですが、私の場合それが重荷になってしまったといいますか。デジタルになって「毎回変わって、楽しく塗ればいい」という意識になりましたね。

近藤 私もカラーは苦手ですね。ずっとモノクロで描いてきたので。カラーは陰影の他に色という情報が増えて、そうなるとどれを選んでいいのか分からなくなります。

星野先生にとってのデジタルの恩恵は、塗りを選べる自由!

――お二人から見て、カラーが上手い人はどういう方でしょうか?

近藤 すごいと思うのは、センス部分で「ここでこの色を選ぶのか!?」ということに驚かされるところですね。

星野 カラーが上手い人って、イラストレーターの素質も持っていると思うんです。私は漫画としての絵しか描けず、キャラの力を借りないと構図や色が作れないというか…。自分が考えたキャラなら彼らはこう動く、こういう表情を見せる…と分かっているから絵にできます。だから知らないキャラで絵を作るのは本当に苦手で、逆にイラストレーターになれる人はキャラに頼らなくても構図や色を生み出せて絵が描けるんだろうなと思ってます。

――カラーイラストで好きな作家さんはいらっしゃいますか?

星野 荒木飛呂彦先生ですね。自分には絶対できない色と構図!という憧れが強いです。

近藤 最近のイラストレーターでミカ ピカゾさんが好きですね。「あの色の選び方は絶対、人間の脳みそからは出ない!」と思わせるほど、ビビッドな選び方がすごくて大好きなんです。でもビビッドさは好みによってはうるさくて苦手という人もいて、よくスタッフさんと「人間って分かり合えないですよね」って話しています。色の好みだけで(笑)。

星野 それはありますね。私も長年一緒に仕事しているのに、美術スタッフの村上さんと分かり合えないですから(笑)。