姫様、足下にお気をつけを!
んむ。しかし、まさかロドノーク湿原の地下にこのようなダンジョンが広がっておるとはの
元々、地下ダンジョンを造る予定だったと聞きます。作業半ばで放棄されたダンジョンが、埋められることなく残っていたのかと
なるほどの
しかしこれはなんとも……ワクワクするではないか
ワクワク、ですか?
ああ。お主にとってはダンジョンなんぞ珍しくもなんともないのだろうが——
妾にとっては初めてのダンジョンだ。ふふ、冒険とはかように心が躍るものなのだな。癖になりそうだわい
冒険といっても、ここには魔物が配置されておりませんゆえ
探検といったほうが適当かの……んん? ポリィ。あの像はなんぞ?
あれは……勇者ラミス様の像ですね
なぬ? ご先祖様とな?
こりゃなんともご利益がありそうな……なにやら触ると手のひらがポカポカせんか?
ハッ、勇者ラミス様の像には、触れた者の体力を回復する力がございますので
逆に魔物が触れた場合、皮膚は爛れ、肉が焼けることになります
面妖な石だの。だが、そのように邪魔っ気な代物を、どうして魔物たちは放置しとるのだ?
触れられないということはつまり、運ぶこともできないということです
中には丸太を使って押そうとする者もいるようですが、重量がえげつないですから
なるほどの……おお? ポリィ、こっちには箱があるぞ?
これは……宝箱ですね
これも人間に利するものよな。やはり魔物が触れると酷い目に遭うのか?
いえ、宝箱にそういった効果はないのですが……なにぶん、鍵の構造が複雑ですので、開けられる者が限られているのかと
んむぅ。触っても害がないのなら隠してしまえばよかろうに
ダンジョンの袋小路で放置されている宝箱をよく見かけます。運搬の半ばで諦めたのでしょう。重量がえげつないですから
行き止まりで心が折れたのだな。可哀想に
さて。勉強にもなったことだし、そろそろ帰るとしようかの
ハッ、そのためにも出口を探す必要があるのですが
……果たしてどちらが出口なのか……
んむ。八時間も歩き通しとるのに、未だに『ワクワクする』などとはしゃいで空気を和まそうとする妾の努力、誰かに褒めてもらいたいわい