ポリィ

姫様、足下にお気をつけを!

キャスラ

んむ。しかし、まさかロドノーク湿原の地下にこのようなダンジョンが広がっておるとはの

ポリィ

元々、地下ダンジョンを造る予定だったと聞きます。作業半ばで放棄されたダンジョンが、埋められることなく残っていたのかと

キャスラ

なるほどの

キャスラ

しかしこれはなんとも……ワクワクするではないか

ポリィ

ワクワク、ですか?

キャスラ

ああ。お主にとってはダンジョンなんぞ珍しくもなんともないのだろうが——

キャスラ

妾にとっては初めてのダンジョンだ。ふふ、冒険とはかように心が躍るものなのだな。癖になりそうだわい

ポリィ

冒険といっても、ここには魔物が配置されておりませんゆえ

キャスラ

探検といったほうが適当かの……んん? ポリィ。あの像はなんぞ?

ポリィ

あれは……勇者ラミス様の像ですね

キャスラ

なぬ? ご先祖様とな?

キャスラ

こりゃなんともご利益がありそうな……なにやら触ると手のひらがポカポカせんか?

ポリィ

ハッ、勇者ラミス様の像には、触れた者の体力を回復する力がございますので

ポリィ

逆に魔物が触れた場合、皮膚は爛れ、肉が焼けることになります

キャスラ

面妖な石だの。だが、そのように邪魔っ気な代物を、どうして魔物たちは放置しとるのだ?

ポリィ

触れられないということはつまり、運ぶこともできないということです

ポリィ

中には丸太を使って押そうとする者もいるようですが、重量がえげつないですから

キャスラ

なるほどの……おお? ポリィ、こっちには箱があるぞ?

ポリィ

これは……宝箱ですね

キャスラ

これも人間に利するものよな。やはり魔物が触れると酷い目に遭うのか?

ポリィ

いえ、宝箱にそういった効果はないのですが……なにぶん、鍵の構造が複雑ですので、開けられる者が限られているのかと

キャスラ

んむぅ。触っても害がないのなら隠してしまえばよかろうに

ポリィ

ダンジョンの袋小路で放置されている宝箱をよく見かけます。運搬の半ばで諦めたのでしょう。重量がえげつないですから

キャスラ

行き止まりで心が折れたのだな。可哀想に

キャスラ

さて。勉強にもなったことだし、そろそろ帰るとしようかの

ポリィ

ハッ、そのためにも出口を探す必要があるのですが

ポリィ

……果たしてどちらが出口なのか……

キャスラ

んむ。八時間も歩き通しとるのに、未だに『ワクワクする』などとはしゃいで空気を和まそうとする妾の努力、誰かに褒めてもらいたいわい