おや。アシナさんが手にしているそれは……業務日誌?
そーですよ? 魔王城に提出する報告書も兼ねて、毎日書いてるんですから
たとえばほら、ラグランさんが赴任してからの業務内容もしっかり——
…………
真っ白ですね
ラグランさん、一日も働いてないじゃないですかァ————ッ!!
なんなんですか!? ロドノーク湿原に来てからびた一日働いてないって!!
はて、びた一日……そんなことはないと思うのですが
そうは言っても、現に……
たとえば、ボクがロドノーク湿原にやってきた日。出向は魔王城の命令だったわけですから、道中の移動そのものが勤務といえます
……へっ……
屁理屈だァ————!!
他にも面接や食料の確保など、なんやかんややっているはずですが
うっ。そりゃまあ……そうですけど
とまれ、それはそれということで。誇りなき功績を誇ったところで誇れるものでもなし、ひとまず置いておくとして
置いた代わりに……これを担ぐとしましょう
……ラグランさん? どうして鍬を?
いえね、お話も一段落したようですから、今日もたがやしに行こうかと
畑作りには熱心なんですね!?
土いじりは心が安らぎますからね
誰が最初に言い出したんだったか……ボクはエンドレス過労師と呼ばれ、忌み嫌われてきました
一二〇〇年間しゃにむに働いていた分、今は静かにのんびりと暮らしたいのです
…………
……はあ……
これじゃ腐導のラグランじゃなくって、不労のラグランじゃないですか
これはなんとも手厳しい
……おや?
珍しいですね。アシナさんがスコップを手にするとは。もしやおひとりでダンジョン建造を?
違いますよ。私にも土壌の囁きが聞こえたんです。もっとたがやせ、って声が
だから……今日は私も土をいじることに決めました
よろしいので? 業務日誌の輝きがまた一ページ増してしまいますが
それはそれ、ってことで
…………
んふふ
そうと決まればさっそく参りましょうか。実は新しい添え木を立てるのに、どなたかの手を借りたかったところでして——