連載デビューは同い年!
連載の始まりと終わり

――連載が始まった頃が、お二人ともちょうど23歳だったんですよね。

藤本:そうなんですか。僕は連載始まるまでは連載のネーム描いていたり、どういう話の方向にしようかとか考えるばかりで、絵を上手くなろうって余裕がなくて、もうだめでした。沙村先生は『無限の住人』の1話が始まった時は何してました?

沙村:大学四年の時に、のちに担当になる「アフタヌーン」の編集さんに、電話で「持ち込みに行っていいですか」って言って。大学の授業をサボりまくってたせいで、四年の時に取らなきゃいけない単位がすごく多くて。大学と漫画のことで、絵なんかまったく描いてる暇が無かったです(笑)。学校で勉強しつつ家ではネームきって、1993年の3月頃…4月かな。在籍中から描いてて卒業してもまだ1話描いて、投稿して夏にそれが載って80万円を貰うまでは、プータロー生活を二、三ヶ月送りましたね。

藤本:僕も卒業してからプータローで、家賃2万円のところに住んでいました。エアコン付いてなかったり大変でした。

沙村:安いですね。連載中に引越ししたんですか?

藤本:そうです。連載が決まった時に上京したんですが、何も分からなかったので担当さんに従いました。

沙村:(笑)。上京してすぐ連載だったんですね。

藤本:はい。最初、「ジャンプ+」が当時だと誰も読んでいないような気がしてすごく不安でした。「2巻しか出せない」みたいなことも言われていたので。

担当:企画が「ジャンプSQ.」で落ちたんですよ。でも僕が諦めきれなくて「ジャンプ+」に持ち込んだら、やっていいよって言われて。

藤本:こっそり「4巻までならできそう」って担当さんから聞いて。どういうことなんだろうって(笑)。

担当:4巻までならきっとできるんじゃないかなって話したんです(笑)。

藤本:一区切りのオチが3巻でつく想定はあったので、3巻までできるならいいかなって。続けられて良かったです。

沙村:4巻まででも“この世界の秘密”みたいなものが片鱗しか見えないので、まだ結構続くんじゃないかとこっちは思ってますよ。

藤本:うかがいたいんですが、沙村先生はどこまで世間受けを気にされてますか?僕はそんなに気にしていないんですけど、「世間受けしないぞ」って意識しているから逆に世間受けしているみたいになっているかもしれません。

沙村:自分がなんの層にどうアピールするかとか、自分が描いているヒロイン像をどんな読者が好きなのかとか、全然分からないんですよね。たぶん俺の漫画が好きとかキャラ萌えしている人って、変わった人なんじゃないかなと思っています。

藤本:僕の作品は、ひと通り漫画読んで飽きた人が読んでいる気がします。

沙村:(笑)。そうかもしれないですね。王道に飽きた人ですよね。

藤本:沙村先生もそうだと思うんですけど、やっぱりセーブしてないんですね。『波よ聞いてくれ』を読んでいて思うんですけど、初めて漫画を読む人は分かるのかなって。僕の漫画も同じで、漫画を初めて読んだ人が『ファイアパンチ』読んだら本当にわけ分からないだろうなって。

沙村:王道的な展開はある程度先を読めるんだけど、それが裏切られるというのが『ファイアパンチ』の面白さですね。4巻まで見ても、アグニとトガタどちらが主役か分かりませんからね。W主役なのかなと。完全に違うものと違うものが混ざり合ったような感じですね。それが4巻で終着したような。

藤本:ちょっと違うかもしれないんですが、『無限の住人』も主人公が複数いるイメージなんですよ。

沙村:連載が長過ぎてね。キャラクターを沢山出し過ぎて、「こいつの活躍も、こいつの活躍も描かなきゃ」ってなってしまって(笑)。キャラクターを出す時に戦う人間を沢山出しちゃうと、その戦いを描かなきゃいけなくなっちゃうんですよね。『ファイアパンチ』ではいろんな“祝福者”が出ますけど、実際に戦闘力が高くて味方側の人間ってそんなにいないじゃないですか。4巻で味方が増えますが、トガタくらいですかね。キャラクターが増えても、主人公の出番を奪うような立ち位置でなければたぶん大丈夫なんですよね。仮に主人公の出番が削れても、サブキャラに魅力があれば持つんですけどね。『無限の住人』は敵の半数以上が剣士だったので、主人公の出番が削れて失敗だったなと(笑)。

藤本:いやいや全然!僕、一番『無限の住人』が好きです。最終話の終わり方なんてすっごく好きで。出てくるキャラクター全員にオチをつけるじゃないですか。普通できないですよね。難しいことだと思うんです。僕は『ファイアパンチ』では少ないキャラクターのオチだけ考えているんですけど、『無限の住人』って主役張れるキャラクターが沢山いると思うので、全員の結末を考えるのきつくないのかなと読みながら思っていました。

沙村:話が終わった時に、重要なキャラクターが10人ぐらい生き残ってたとして、それぞれページを割いて長々と説明するというのでなければ、7~8人は1話あれば描けますよ。『無限の住人』に関しての最終回は、不死身の人が主人公である話のオイシイところというか、一人だけ未来にいるところという…そこは絶対やりたいと思っていたんですよね。なので最終回だけは決めていました。

藤本:主人公は死にたかったじゃないですか。あの終わり方は本当にもう…。ラストの構想はいつからあったんですか?

沙村:もともとは主人公がパートナーを変えつつ進むストーリーにしようと思っていたんですが、巻数重ねるごとに無理だできないと思って(笑)。凜の復讐が終わったら連載も終わろうと思ったんです。なので単行本が10冊以上出たぐらいから、最終話のイメージは出来上がっていましたね。細かい演出はもっと後から決めたんですが。『寄生獣』とか、あんなにきっちり終わらせているように見える作品が、あとがきで「途中でテーマが変わった」って言っていましたね。そういうものだと思いますよ。描いている時の流行りとか時勢とかもありますし。

藤本:考えていることも変わりますからね。僕も現時点で構想はありますが、これから変わるんですかね…。変わったほうがいいですかね?

沙村:いい形だな、と思ったらいいんですよ。

藤本先生はラフからすべてデジタル作業で行なっている。沙村先生が作成したラフをスキャンしてパソコンに取り込み、デスクトップ上で万次を作画。