衝撃のダークファンタジー『ファイアパンチ』と、至高のネオ時代劇『無限の住人』。両作品のヒーローである不死身の二人が、『ファイアパンチ』5巻発売を記念して奇跡の対峙を果たす!
藤本タツキ先生が学生時代から敬愛しているという、沙村広明先生への熱烈な愛により実現した本対談。お互いのヒーローを交換して描いたコラボイラストとともに、大ボリュームで大公開!! ぜひご一読ください!
藤本:僕、作家さんと対談するのは初めてで。沙村先生は以前『NARUTO』の岸本先生と対談されていましたよね。俺なんかが…と思いました。今日はいつも通りの姿で来ました。髭も剃らないで。
沙村:俺のスケジュールよりもあなたのスケジュールの方が絶対忙しいはずだから。気にしないでください。今回の対談で、藤本先生が若いのでアドバイスを俺からしてもらえたら、という趣旨を聞いたんですが、正直俺の経験というか漫画人生は全部月刊誌のもので。これからあなたがやっていく漫画人生のほうが絶対俺よりハードだから、あんまり言うことないなと(笑)。
藤本:いえいえ!僕、作画に妥協している部分がいっぱいあるんですけど、『無限の住人』にはそういう部分が無くて…聞きたいことがいっぱいあります。沙村先生は僕にとってレジェンドなので。今回の対談が決まったって聞いた時から、夢に2回出てきたんです。沙村先生のでっかいおうちが出てきました。
沙村:(笑)。うちの家でかくないんですけどね(笑)。
――今回の対談は、藤本先生が沙村先生のことを敬愛されているという点からスタートしているんですが、実はすでに沙村先生ご自身で『ファイアパンチ』のコミックスを買われていたうえに、藤本先生が過去にやられたインタビューもご覧になり藤本先生のお気持ちをご存じだったことから、実現に至ったんです。
沙村:あ、そうそうそう。
藤本:えー!!そんなこと、いいです。僕あの…いいです。
沙村:『ファイアパンチ』の第1話って、ネット上で結構噂になっていたじゃないですか。あれで俺とかアシスタントが見て、「これ面白いな」って。俺が『ファイアパンチ』の1巻を買ってアシスタントに読ませていたんですが自分も読み出して、ずっと集めていますよ。
藤本:沙村先生が…。もうなんでも言ってください。
沙村:俺は“この先どうなるか分からない漫画”が結構好きで。『ファイアパンチ』で言うと、トガタが出てきてからの展開って、少年漫画でいうとナシだと思うんですよ(笑)。だけど、ああいうのが結構好きなんです。「え、コンセプトどうなってるの?」っていうね。それが好きだって言う人と、軸がぶれてるって言う人がいますが、結局は同じことなんですよね。どうなるか分からないハラハラが楽しいって感じる人と、もっとしっかりした柱が欲しいって感じる人の違いで。言う人は言うけど、俺は好きです。しかも、そういうことも4巻くらいで合致してきて、ちゃんと軸になってきてるし。
藤本:いやぁーすごく嬉しいです!!僕、ずっと韓国映画みたいな漫画を描きたいと思っていて。『チェイサー』っていう映画があるんですが、主人公が悪役を追う映画なんですね。開始30分くらいでもう悪役が主人公に捕まるんです。話しのオチであろう展開がすぐ起こっちゃって、「どうなるんだ、どうなるんだ」の繰り返しなんですね。韓国映画って、監督が何を思ってるか分からないとか言われがちなんですけど、最後まで観れば、「これだ」っていうのが分かるんです。そういう風に作りたいなって思っています。
いやあ…沙村先生から『ファイアパンチ』って言葉が出るのが嬉しいです(笑)。学生の頃から読んでいる人から…不思議ですね。ポカーンとしちゃいます。
沙村:『ファイアパンチ』を読んでいるプロの作家さんは、普通に沢山いると思いますよ。
担当:帯のコメントをいただいた作家さんたち(※石田スイ先生、村田雄介先生、ONE先生)も、読んでくださっていました。
藤本:皆さんありがたくて…。
沙村:ネットで拡散されたのは良かったですね。あれを読んだら「すげえのが始まったな」と思いますよ。
藤本:いやいや…本当に、今の時代っぽいですよね。沙村先生は実写映画化された『無限の住人』は観られたんですか?
沙村:試写会で観ました。『無限の住人』は過去に何度も映画化の話があったんですけど毎回ぽしゃってて、そういう運命なのかと思っていて。そしたら突然、「木村拓哉さん主演で映画を撮るので台本チェックしてください」って言われて。その台本を、郵送だと間に合わないからバイク便で送るので、と。今日初めて聞いたのに「そんな急ぐの?」って驚きました(笑)。慌てて決まったらしいです。
藤本:本当の話なんですねー。すごいですね。ご覧になってどうでした?
沙村:アクションシーンが、俺の想像していた1.5倍ぐらいの長さあったんですよ。木村拓哉さんがすごいがんばってくれて。自分の作品の映像化って、特に今回は若い時に描いたものなので、セリフが20年前に考えたものなんですよね。映画の出来がどうっていうよりは、俺が「今だったらこんなこと言わねえのにな」って。そっちに対する恥ずかしさのほうが先立ってしまって、三池監督に文句言うとかそういう以前に、よく作ってくれたなと思います。原作を知らずに映画を観た方で、もし「この映画イマイチだったな」って思ったら原作を読んでいただいて。そのまんま全部原作にあったことですよ、と言いたいです(笑)。
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