2019-09-06
この「こち亀」のページには「あるテクニック」が見事に駆使されています。
なにがどうスゴいか…わかりますか?
はじめましてこんにちは。
集英社キャラクタービジネス室副室長の齊藤と申します。2005年に集英社に入社して14年半ほど週刊少年ジャンプ編集部在籍し、昨年末に異動するまで30本ほどの漫画を担当しました。
このブログでは、新人漫画家さん向けに「編集者はこんなことを新人さんに伝えているよ」、ってな話、精神論ではなく可能なかぎり「具体的で」「すぐ使える」漫画技術を書いていきます。
漫画を描き始めた時、まず「伝える」ことの難しさに直面すると思います。
描いた作品を友達に読ませても「読みづらい」「わかりにくい」「読んだけど頭に入らない」と言われる。自分は一生懸命描いた。でもなぜ伝わらないと言われてしまうのかわからない…。
自分の経験で言いますと、描いた漫画が「わかりにくい」と言われている場合、多くは「絵とセリフが一致していない」のが原因です。
どういうことかというと…
下の画像をご覧ください。
サイトウはどれだ?
ほんとに効いてんのかよ!?
二人で一人、というけれど…?
どうでしょう。
AよりもBのほうが読みやすいと思いませんか?
Aは描きたい絵を入れただけですが、
Bにはセリフに合わせた絵を入れてみました。
この「絵とセリフが一致させる」ことを意外と知らないまま漫画を描いている方、なんとなくの絵を入れている方が多いです。でも意識するだけで、だいぶ読みやすさが変わってきます。
お手本のように徹底されているのが、実は『こち亀』です。この「一致」を踏まえて、冒頭の(個人的に大好きな)73巻「突撃!クレーンゲーム」の回を見てみると…?
気づきましたか?
完、璧…!!!!
『こち亀』の圧倒的わかりやすさは、まちがいなく「絵とセリフの一致」の徹底から来ています。
また、顔アップのコマなどでも、漠然と雰囲気で表情を入れるのではなく、「何行目のセリフの感情に合わせる」くらい焦点を絞って「絵とセリフを一致させる」ほうがいいです。
たとえば、最後のコマの部長の表情は「欲のかたまりだからな」というセリフに焦点を絞って入れられてますね。
いかがでしょうか。今漫画を描いている最中の作家さんは、この「絵とセリフの一致」を意識して作品を見直すだけでもグッとわかりやすくなるのでおすすめです。(もちろん、演出次第であえて外すこともあるでしょう。意図がしっかりあれば大丈夫だと思います)
少しでもお役に立てれば幸い。
少年ジャンプ編集部時代、サイトウは多くの漫画を担当させてもらったのですが、そのうちの1つに「アイシールド21」「ワンパンマン」の村田雄介先生が描いた「ヘタッピマンガ研究所R」という新人漫画家向けのテクニック伝授&有名作家インタビューマンガを担当しました。
この経験が楽しすぎた結果、少年ジャンプ編集部でも有数のマンガ話好きになりました。
たぶん漫画の話だけで三日三晩は余裕でいけます。
今読んでもめっちゃ面白いんですよ!!
そして、昨年末に「キャラクタービジネス室」に異動。入社以来、初めて読者アンケートのプレッシャーから解放されつかの間の平穏を味わっていたところ、同期であり少年ジャンプ+副編集長モミー(@momiyama2019)から、
「少年ジャンプ&ジャンプ+もバンバン新人作家の漫画を増やしたい、ついては新人作家の役に立ち、かつジャンプに来たくなるようなことを書いてくれ。漫画の話、好きでしょ?」と頼まれました。
はて、そんな一石三鳥な話ってなんだ?とあれこれ悩みましたが、
「そもそも、新人作家さんは持ち込む前は編集者が具体的にどんな話をしてくれるのか知らない」「漫画読まれて『面白い』『面白くない』だけ言われて終わると思われてるかも」と考えまして。
「こういう話を聞けるなら見せに行こうかな」と思ってもらえる、より気軽に作品を見せてもらえるよう、普段作家さんと話している漫画技術の話を書こうと思い至りました。
ちなみに、編集者が持っている漫画論は、実践を重ねて固まっていく自分なりの理論プラス、編集部の先輩&後輩、担当しているベテラン作家、他部署・他社の優秀な編集者などから教わったことのごった煮から形成されています。当然、新人作家さんから教わることもあります。
次回は引き続き読みやすさを一瞬で上げるテクニック、「ヒロアカに学ぶ、1コマ1情報」というテーマで書きます。
モミーに「最初は時間を空けるな」と言われているので、来週には更新します…!
©秋本治・アトリエびーだま/集英社
カット/ワタナベマユミ