――星野先生も怖い話がお好きですか?
星野 『Dグレ』を描く上で避けて通れないと思い、ホラー映画ばかり観たり、怖いゲームをアシスタントさんにプレイしてもらって見ていました。それもY氏(※『Dグレ』初代担当)がホラー要素が必要と考えたからです。「今、ジャンプにないのはダーク路線のファンタジー。ここが狙い目だ!」と。私は「怖いのは嫌です、現代ものをやりたいです」と言っていたのに、Y氏を止めることなどできなかった(笑)。今ではホラー好きですよ。
――怖いものは何から入りましたか?
星野 やはりこれから入らねばならないだろうと、映画『エクソシスト』です。黒づくめの神父のイメージが強いうえ、ラストシーンで自分の中に悪魔を入れる姿にアクマのシステムが浮かんできて、観て良かったと思います。ゲームだと世界観が綺麗な『零』とか。アシスタントさんが「怖い、もう無理です!」というのを「もうちょっとだけ頑張って!」と、部屋を真っ暗にしてプレイしてもらいました(笑)。
近藤 私は特定の作品ではなく、昔TV特番の心霊映像などの記憶の蓄積です。あとはネットの怖い話にも影響を受けていると思います。フィクションだと作劇の基礎がちらついて、あまり怖いと思えないんですよ。お化けが出そうな予兆があったら「自分ならこうする」と考えてしまって。
――連載を始めて一番大変だったことは何ですか?
近藤 単純に、夜宵ちゃんの作画が面倒臭いです(笑)。連載が始まって2日目くらいに気づきました。
星野 レギュラーキャラのデザインが凝り過ぎて作画で追い詰められるってあるあるですよね。私は今ではキャラのデザインを考えている最中に「こんなに盛り込んだら、作画で死ぬなぁ」と分かるようになりましたが。近藤くんも続けていくうちにだんだんそうなっていくんだよ(笑)。
――今、一番興味があることは何ですか?
近藤 私は怖いものばかり考えているから癒しが欲しくて…犬です!半年前まで猫派だったのですが、スタッフさんが2人、犬を飼っていて。
星野 染められちゃったんだ(笑)。
近藤 でもアレルギーだから飼えないんですよ。叶わない恋です。
星野 私は文房具です!いよいよ「趣味の文房具」という季刊の文房具雑誌でコラム連載が始まりました!!万年筆とか手帳とかのイラストコラムを好きに描かせて頂き、しかも今回は巻頭に載ります!今、一番好きなことがお仕事になりました。
近藤 (掲載原稿を見て)これは…!熱量がすごいですね!!
星野 9月5日の「趣味の文具箱」51号から載っています!バックナンバーも取り寄せられるので、ぜひ見て下さい!
――文具は昔からお好きだったのですか?
星野 いえ、デジタルに切り替えて「何でも描ける魔法の道具!わー便利」と思っていたら、急にアナログの不便さに惹かれ始めて、それではまりました。ボールペン、万年筆、革の手帳が好きですが、小さなクリップ一つでも語ろうと思えば語れます(笑)。
――今後挑戦してみたいことはありますか?
星野 少女漫画を描いてみたいです。昔一度挑戦しようとした事があるのですが、自分には少女漫画を描く才能がない!と挫折しまして。でも最近、なんとなく「今なら描けそうな気がする」と感じることが多くなってきたので。
――それで敢えて、少女漫画に挑戦したいということですか?
星野 『Dグレ』とは違って読んでほわっとして「ああ、面白かった!」と、すぐに本を置けるような物語が描きたいんですよ。そうなると少女漫画がいいのかなぁ…と。以前、読切『妖の王』という夫婦ものを描いたのですが、うちの家族が気に入ってくれて。ああいう、誰も死なない話が描きたいです。あとは文房具の擬人化漫画も妄想してます。今のところイケメンが多いので少女漫画で描いた方が合っているのでは(笑)。
近藤 私は面白みがないですが、今描いているものよりもっと面白いものを描きたいです。全部納得して満足して描けているかというと、それはないと思うんです。回によってふり幅があると思うので、高く安定させて理想の漫画に近づけたいですね。
星野 それはすごく大事なことですが、すごくしんどいですよ(笑)。私も常に100点を極めたいと思って、週刊時代から「今週も納得できるものが描けなかった…」と自分を追い詰めていたんです。ある時、小畑健先生に「連載で100点を目指すのは無理。80点くらいを目指さないと」と言われたことがあり、今はその意味が分かります。そこらへんの塩梅を受け入れていかないとだんだんと自分が潰れちゃう。「次こそいいものを!」という気持ちはすごく素晴らしいし描く原動力なりますが、連載漫画では理想を追いすぎると自己嫌悪に陥ってしまうこともありますので。満足いかない回もたまには受け入れてあげてね。近藤くん真面目だから心配。
近藤 はい。確かに100点を目指しているのではありませんが、赤点ギリギリを何とかしたいんですよね。
星野 大丈夫、大丈夫、考えすぎだよ!赤点だなんて思っているのは自分だけだよ。