箏曲と体操という異なる題材で高校生たちの眩い情熱を描き出す『この音とまれ!』『ムーンランド』。アシスタント時代から交流を続けてきた両先生に、部活漫画や群像劇の魅力を語って頂いた!

いつの間にか出会っていたアシスタント時代!

――アミュー先生と山岸先生は元々アシスタント仲間で、『この音とまれ!』では山岸先生も手伝われていたそうですが?

アミュー 初めて山岸さんとお会いしたのは、『SPY×FAMILY』の遠藤達哉先生が「ジャンプSQ.」で『月華美刃』を連載されていた時です。私は1話目からお手伝いさせて頂いていたのですが、気が付いたらその仕事場に山岸さんがいらっしゃっていて。

山岸 私は一番最初のアシスタント先が遠藤先生でした。担当さんに紹介されて、ヘルプのヘルプというような感じでしたね。

アミュー あの頃は仕事場の部屋が2つあって、別々に作業していたんです。だからいつ山岸さんが入ったのか分からなかった。ご飯の時にみんな揃って、そこで「初めて見る方が増えているなぁ…」って(笑)。だからちゃんとした挨拶って…。

山岸 お互いにしていなかったですよね(笑)。他にも色んな方がいらっしゃいましたが、みんないつから入っているのか知らなくて。

アミュー アシスタント同士の交流がないわけではないのですが、普段の会話は部屋ごとで、しかもよく分かれるので。だから相手の名前に自信が持てないんです。「○○さん…だったっけ?」となりそうで、会話していても名前を呼べないという(笑)。

山岸 周囲の方が呼んでいるのを聞いて「ああ、この方がアミューさんなんだ」と、何回目かでようやく確信が持てるようになりました。

アミュー だから山岸さんときちんと話すようになったのは、『この音とまれ!』の連載が始まって、手伝いに来て頂くようになってからですね。

――一緒に仕事をされていた時、どんな話をされていましたか?

アミュー 仕事の話は全然しないで、雑談ばかりでしたね。

山岸 この前観た映画の感想とか、楽しみにしている新作とか、他に好きな漫画とか…仕事場のみんなで作品の話をしていましたね。

アミュー あとは仕事場では映画やドラマを流していたので、みんなでツッコみながら観たりとか。特に山岸さんは知識が豊富で、観た作品を的確に分析していましたね。私はミーハーで上辺に目が行って、山岸さんみたいに深いところまで気付かなかった(笑)。

山岸 アミューさんも私も王道作品が好きですよね。海外ドラマだとアミューさんは『24-TWENTY FOUR-』にすごい熱中していましたね。

――そういった交流が仕事に反映されたことはありましたか?

アミュー 作品には直接ありませんが、影響はあります。私は一人で籠って描いていると、考え方がシリアスになり過ぎてしまうんですよ。人と雑談をして頭を柔らかくするあの雰囲気は大事だったと思います。

作品に漂う柔らかく優しい空気感。仕事場の雰囲気からの影響も…!?

山岸 私は遠藤先生やアミューさん、一緒にアシスタントをした方々を見て「漫画って、きちんと考えて描かれているものなんだ」と気づきました(笑)。駆け出しの頃、自分が何を描きたいのか、どう描けばいいのか分からず…。そんな時に連載作家さんの仕事を見ると、原稿になっていない部分まで深く考えられていることを知りました。自分はまだまだ、突き詰め方が足りないんだな…と。

アミュー 山岸さんは真面目なことを言ってくれていますが、お互いに話すことは下らないことばかりでした(笑)。

――お互いの漫画を読んで感想を話したりしますか?

アミュー 面白い作品を見つけたら勧め合いますが、お互いの連載については…。以前、山岸さんの読切を読んだ時は感想を伝えましたが「めっちゃ面白かった!」「あの場面が好き!」とか、本当に読み手としてですね。自分たちの作品の話となると、みんな照れちゃうんですよ(笑)。

山岸 感想が始まると、一生懸命話題を逸らせようとしますよね(笑)。「自分の漫画の話はいいから!」と。

アミュー 本心では嬉しいんですが、対応に困るというか…。

山岸 どんな顔をして聞けばいいのか分からない(笑)。