――近藤先生から見て、星野先生の仕事場はどんな雰囲気でしたか?
近藤 皆さんレベルも意欲も高くて、すごく勉強になる場で…。
星野 あとおふざけも多かった(笑)。
近藤 そうです(笑)。漫画やアニメの話をよくしていて、泊まり込みの時は突然誰かがアニソンを唄い出したり。背景をアナログで描いていた村上さんと私は前半に仕事が集中するのですが、デジタル班は逆に余裕があるから結構遊んだりしていて(笑)。
星野 斉藤さん、土屋さんのデジタル班はおふざけがすごく、さらに佐藤祐紀くん(『スギナミ討伐公務員』作画担当)が加わって、より一層騒がしくなって(笑)。そんな中で近藤くんは真面目で、内心「ちょっとは力を抜いてほぐれたらいいのに!」とか思っていました。締切が近くなると皆、泊まり込んでくれるのですが、うちの母が皆の洗濯物を集めて洗ったり、豚汁とおにぎりを作って持ってきたり、合宿みたいになっていましたね。
近藤 本当にありがたい環境でした。その他の思い出といえば、体重が気になって減量したんですが、そこそこ結果が出た時に星野先生が「一人だけ痩せてずるい!」と思われたらしく、原稿のチェックが少し厳しくなったことがあります(笑)。
星野 それバラすの⁉
――近藤先生は星野先生にネームを見てもらうことはありましたか?
近藤 一度、連載コンペの結果が出る前に見て頂いたことがありましたね。
星野 確か「女の子のキャラが弱すぎる」みたいなことを指摘した覚えがあります。言おうかどうか迷ったけれど「ここはしっかりと伝えねば!」と思って厳しめに(笑)。だから『ダークギャザリング』を読んだ時に、女の子の印象がすごく変わっていて驚いたんですよ。私がネームを読んだ頃は主人公に頼り切るヒロインだったので「このヒロインは読者に好かれない」と言った覚えがあります。そんなヒロインのために戦っていたら主人公も映えない…とか。
近藤 ネームの感想もそうですが、星野先生は事あるごとに「読者がどう感じるか」を口にされるんですよね。おそらく意識されていないと思うのですが、そこにプロ意識とレベルの高さを痛感しました。
――星野先生はネームを見て欲しいと頼まれることは多いのですか?
星野 ネームを見るというより、ファミレスで皆で一緒にネームを描いて、詰まったらお互いに茶々を入れたりとかはたまにしていましたね。当時の皆はすでに実力があって自分の世界観も持っていて、あとは連載会議で通れば連載できる子ばっかりでした。それぞれ担当さんと打ち合わせしているので、私も一緒にネームを描いては意見を言うという、対等の感じでやっていましたね。
――近藤先生は作家となって、改めて星野先生の尊敬する点はどこですか?
近藤 妥協しない作品づくりに向けた姿勢です。おそらく根本にあるのは創作の個人的な満足感よりも、読者が楽しめるかどうかを隅々に至るまで突き詰めていたこと…なのではないかと考えております。そこまで気を巡らせるところを尊敬しています。